2009年7月7日火曜日

日本化学会誌巻頭言へのコメント S61卒 渡辺 敏行

 会誌の厚さ、中身共にどんどん希薄になっている日本化学会誌であるが、理化学研究所の川合真紀氏による今月号の巻頭言は興味深い内容であった。科学研究費の採択に関する統計データを分析されていた。科学研究費の採択に関しては、偏りがなく、その審査は公平なものであるとの見解であった。このコメントは採択率に関しては正しいが、配分金額を見てみると、確実に旧帝大が優位であることがわかる。例えばH21年度に関して採択件数と、金額を比較してみると、農工大(209件、717,550千円)、電通大(155件, 344,180千円)、横国大(229件, 568,380千円)、東工大(669件, 3,281,460千円)、東北大(1,878件、7,437,550千円)東大(2894件,16,377,631千円)となる。農工大は教員全員が科学研究費に申請する方針なので、採択率ランキングでは上位には登場しないが、配分金額では同規模の大学を遙かに超えているのである。合併が検討された電通大の倍以上の科研費を獲得している。採択件数を教官数で規格化すると、農工大、東工大、東大はほぼ同じラインにのるが、採択された研究課題1件あたりの、研究費を比較すると、東工大、東大には及ばないのである。これは東工大、東大は大型の研究費を獲得しているのに対して、農工大では、その数が少ないことに起因している。1つの研究室に教授、准教授、助教、ポスドク、博士後期課程の学生が多数在籍する、旧帝大、東工大の方が、論文数が増えるので大型予算が獲得しやすいのである。化学会誌では理数系大学の方が、効率よく科学研究費を獲得できていると書かれている。それはその通りであるが、インフラが整っている旧帝大系の方が有利であることは否めない。

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