2009年9月10日木曜日

X線回折装置 S38卒 京谷 陸征

緑と樹木に囲まれた筑波大学の研究室で炭焼きをしています。いろいろ工夫した上での黒色の焼きあがり具合を見るのが結構面白い。と言っても、木炭作りではありません。少し格好をつけて言いますと「機能性炭素材料及び導電性高分子に関する研究」です。繊維や織物・編み物も時々焼いています。客員研究員です。

Webで同窓会を」という8月7日付けの事務局からのメールを受け取りました。このBlogの記事も、たまに開いて興味を持って読んでいます。7月に渡辺敏行先生が書かれたB社でのX線回折装置の見学の記事を読みました。この事に関して過去の記憶を含めて少し感想を記します。

渡辺先生も記されているように、いまやX線回折装置は高分子を含めてあらゆる形状の物質の固体構造(場合によっては液晶も)の解析屋にとっては、必須の装置です。私も国立研在職時代、研究業務以外の仕事で研究室を離れた期間を除いて、この装置とは非常に長~~い付き合いです。主として繊維・高分子関係の結晶性・分子配向性・結晶多形等の測定を行い、関係している殆どの論文(paper)・特許にX線のデータが入っているくらいです。元もとの使い始めのルーツは、かなり過去の話ですが、故坂奥喜一郎先生の研究室に卒論実験でお世話になっていました時、その当時、農工大にはこの種の物理化学的測定を行う分析機器が無く、先生の紹介で、当時、昭島にあったR社(理学電気㈱)へ出かけ、自作のポリエチレンの単結晶状試料(その頃、研究室には正式の恒温槽も温度制御装置も無く、ガラクタの部品を寄せ集めた手作りの装置を使用し、その上結晶作りは、先生から渡された長文の英文論文のコピーを参考にして、試行錯誤の連続で、大変苦労しましたが)のX線回折測定を行ったのが始まりです。

 分析機器といえば、当時の坂奥研には、何故かわかりませんでしたが、N社製の旧式の透過電子顕微鏡(TEM)があり、先生が大切に使われていました。電気回路系は昔懐かしい真空管。画像処理は、これもまた、アンテイークな写真用のガラス乾板(重かった!)。現在では博物館でしか見られないかも。この装置のお陰で私も何とか卒業できました。電顕のことは、次の機会にでも記します。

 X線回折装置の話に戻ります。この装置は長い間、国内ではR社が独占的に近いメーカーであり、私もR社の装置しか使ったことがありません。一応、長い歴史のあるメーカーなので、メンテナンスも比較的しっかりしているという事もあります。ただ、国内で独占的メーカーであるため費用が高く、研究費が少ない年度に修理の必要な場合にはしんどい思いをしましたが。そこでR社に対抗するために、M社(マックサイエンス社)というメーカーを、R社出身の技術者が作ったようです。この社が発展していくことを期待していたのですが、残念ながら、渡辺先生が見学されたB社(ブルーカー)にかなり前に吸収合併されたようです。私自身はB社の装置は使ったことがありません。B社は、元々、NMR装置で有名なメーカーだと思います。この社はヨーロッパでX線回折装置のメーカーであったP社(フィリップス)のX線部門も吸収合併したようですし、最近、同装置のメーカーとして発展しているのかもしれません。もともとのP社の装置は外形もスマートだし、それなりに使いやすいという話はよく聞きます。ただ、外資系ですので、アフターサービスやメンテナンスなどはいかがでしょうか。

大学も独法化後、予算的にもかなり厳しい状況になっています。装置の更新の最終決定までのプロセス、大変だったと思いますが、いずれにしても予算化実現おめでとうございます。X線ビームの強度・平行性等がかなり向上し、しかも測定条件やデータ処理等もデジタル化しているようですが、学生・院生にとってもfriendlyな装置であることを期待します。